きみと、まるはだかの恋
「なんか、らしくねえな。気持ちは分かるけども」

「なっ。らしくないってどういうことよ」

「だって、昔の波奈はずっと明るいやつだったから。そんなふうに感傷に浸ってるとこ見るの初めてだなと」

「……そう?」

「うん」

 確かに高校生の頃の私は努めて明るく振舞っていたように思う。だけど、いつも明るい自分でいられるかと聞かれたら、あの時だって答えはNOだった。ただ友達や先輩後輩たちの前で、明るい自分でいたかっただけ。叶わない恋に悶々としながら眠れない夜を過ごした日だって多かった。昴が知らないだけだ。

「まあでも、ここだけ時間がゆったり流れてるっていうのはすごく分かるよ。俺も、あくせく都会で働くよりこっちで過ごすほうが心地いいって思えるから」

「そっか」

 トワイライトの空を眺めながら、目を細めて大きく深呼吸をする昴を横目で見ると、昴は本当に星見里で生きているんだな、と改めて実感した。

「さ、もうすぐロープウェイに着くぞ。心の準備はいい?」

「う、うん」

 気がつけばロープウェイ乗り場に到着していた。チケット売り場には『星見高原へのロープウェイのりば』という大きな看板が掲げられている。
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