きみと、まるはだかの恋
「こんばんは」

 売り場の窓から昴が中を覗き込むと、中にいるスタッフ——おそらく三十代半ばぐらいの男性が、「おう」と片手を挙げた。こんがり焼けた肌と筋肉の盛り上がった腕が、なんだかこの場に似つかわしくない。彼も昼間は農業をしているのだろうかと予想する。

「このひとは長嶋(ながしま)さん。ここで働いてる」

「は、初めまして」

「え、なになに? 昴の彼女さん?」

「ち、違いますよ! 高校時代の友達です。彼女も一緒に乗せていいですか?」

「なーんだ。そうか。まあでもこれから何か起こるかもしれないしな? どうぞどうぞ〜」

 星見里のひとたちは私と昴が二人でいるところを見ると、どうもそういう関係だと勘違いするらしい。というか、昴の反応を見て面白がっているだけなのかもしれない。

 昴に案内されて、やってきたゴンドラに乗り込む。四人がけのぐらいのゴンドラで、狭くもなく広くもなく、程よい広さの空間だった。
 乗り込んで程なくすると、『星見高原へようこそ』というアナウンスが流れ始める。

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