きみと、まるはだかの恋
「それでは解説を始めますね! みなさん、よかったら座ってゆっくりしてくださいね〜。寝転がると、首が痛くなくて良いですよ」

 ツアーの前に、観客にはそれぞれビニールシートが配られている。みんな、思い思いの場所にビニールシートを広げて座る。私は昴のすぐ近くに、ひとりで腰を下ろした。さすがに寝転がる勇気はなくて、顔を上げて空を仰ぐ。
 昴が大きく息を吸って解説を始めた。

「今夜は新月が近く、天気も良くて空がクリアに見えますね。ぜひ、都会では味わえない星見里の星空を堪能していってください。まずはあそこ。ペガサスの四角い形、見えますか? 秋の四辺形と呼ばれています。あの星々、二千年以上前から人間が見上げて、物語を作ってきたんです。星見里の昔話じゃ、ペガサスは恋人たちを乗せて空を飛ぶ馬だと言われてますよ。って、実はこの話は私がつくったんですけどね」

 冗談混じりの昴の言葉に、観客たちがははっと笑い声をあげる。
 昴は、星空観測用のレーザーポインターで空の星に光を当てながら話している。私は、星の解説よりもまず、天まで届くレーザーポインターがあることに感激していた。まるで本当にプラネタリウムに来たかのようだ。でも頭上に広がるのは本物の夜空。見渡す限り星が散らばっていて、本当に東京からは見えない星の海を眺めているといった感じだった。
< 54 / 186 >

この作品をシェア

pagetop