きみと、まるはだかの恋
 どうしてかアンニュイな気分に浸っていると、バトンタッチで星田さんが解説をしている間に昴が私を見下ろしていることに気づいた。

「どう? 楽しんでる?」

「う、うん。詳しくてすごいね」

「仕事だからさ、いろいろ調べただけだよ。俺だってまだまだ知らないことがたくさんある。一つ、新しい知識を入れるたびに、ここで自分の話を聞いてくれるお客さんの顔が思い浮かぶんだ。この星は、どんなふうに解説しようかなって考える。星に興味がないひとが聞いても、興味深いと感じてくれるようにさ。そしてまたいつか、何度でも星見里に訪れてほしいって思ってる」

「何度でも星見里に……」

 彼の熱意がありありと伝わってくる。
 昴はこの場所が好きなんだ。
 自分の暮らしている場所と、仕事に誇りを持っている。
 私は……どうだろうか。
 インフルエンサーとしての仕事には確かに真剣に向き合っているし、自分にしかできないと思って頑張っている。
 だけど……本当に、私にしかできない仕事をしているだろうか?
 私がやっている美容コスメの紹介だって、別の誰かがやっても同じなんじゃないか。
 私にしかできない仕事。私にしかできない生き方——それはいったいどこにあるんだろう。
 
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