きみと、まるはだかの恋
「私、今……」

 私は、昴のことが好きだった。
 彼は初恋のひとで、忘れられないひとだ。
 だからなのかな。
 初恋のひとに再会したら、みんなまたそのひとのことを好きになるもん……?
 初めての経験だから分からない。SNSで捕まえた男としか恋愛をしてこなかった私には分からない。
 だけど今、昴に一秒でも長く触れていたいと思う心は、確かに本物だ。

 自分の肩に乗っている昴の頭を支えて、そっと彼の顔に自分の顔を近づける。
 そのまま——唇を重ねた。

「ん……」

 昴がちょっとだけ声にならない声を発する。だけど、寝ているのは変わりないようで、目を開けることはない。ほんの一瞬の口付けだった。目を開けられるのが怖くて、一瞬で離れてしまった。だけど、口付けをした瞬間、やわらかな彼の唇の感触に胸が震えた。甘い気持ちがどんどん広がって、できることならもっと昴のすぐそばにいたいと思ってしまった。
 もう自覚してしまった。
 私は、昴のことが好きだ。
 初恋のひとにまた恋をしてしまった。

 星の見える美しい里で、一つ屋根の下、心臓の音が爆発しそうなほどに胸が燃え上がるのを感じて、夜、なかなか眠りにつくことができなかった。
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