きみと、まるはだかの恋

第四章 つまずいたり、進んだり

 昴の家でしばらく暮らすことになったが、着替えやメイク用品などもろもろを取りに、一度東京に戻った。
 高速バスに揺られている間、本当に自分が今から星見里で暮らすのかという実感が沸かなくて、頭がふわふわとした感覚に陥っていた。バスの中でようやく圏外ではなくなったスマホに、通知音がピコンピコンと鳴り響く。慌ててマナーモードにして、メールやLINEを確認した。

「うげっ」

 仕事関係のメールとLINEが合わせて十件ほど来ていた。あとは、先日別れたはずの男、山城裕からなぜか連絡が来ている。ブロックされていたはずなのに、わざわざ解除して何の用なの?
 仕事の連絡よりもなぜかそちらのほうが気になって彼とのトーク画面を開いた。

【波奈〜やっぱり俺、また波奈と付き合いたいなー】

「はあ!?」

 思わず頓狂な声が漏れる。通路を挟んで向かいの席に座っていたひとが、何事かと私をチラ見したので小さく肩をすくめた。

「なんで、なんで……」

 重いひとが苦手だなんて言って、LINEで私のことを軽く振ったくせに。
 なぜまた、こんなふうに何事もなかったかのように連絡してこれるのだろうか。

 窓の外の移り行く景色を眺めながら、彼に返信をするか迷った。
 たぶん、別れた直後の私ならいそいそと返事をしていただろう。別れてからまだ二十日も経っていないけれど、私の中で確実に新しい恋心が芽生えて、この男のことなどすっかり頭の中から消え去っていた。
 私はしばらく迷ってから、一応返信することにする。
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