きみと、まるはだかの恋
【ごめん。私、軽いひと苦手なの】

 これ以上皮肉な返事があるかと、心の中でくつくつと笑っていた。
 あなたは知らないでしょうけどね。私、今から東京じゃない別の場所でしばらく暮らすの。都会で生まれ育ったあなたはそこでの生活はきっと無理だよ。
 裕を目の前にしてそう言ってやりたい。胸の中で確かに湧き上がる新しい自分の気配に、なんだか胸がむず痒かった。

 その後、仕事の連絡に対しては、急を要するものがなかったので、しばらく活動を休止する旨を順番に伝えていった。一緒に星見里を訪れたベストツーリズムさんは、星空ツアーに行けなくて残念そうだったけれど、また折を見て訪ねるからその時はよろしくと言ってくれた。その他、撮影の予定が入っていたら問題だが、一ヶ月先までは入っていなかった。だから、とりあえず一ヶ月。その期間だけ活動をお休みする。貯蓄は十分にあるし、一ヶ月だけなら復帰もそれほど難しくないだろう。その後のことは、またあとで考えよう——返信を済ませたことで胸につかえていたものがすっととれたような気がして、そのまま眠りの世界へと誘われていた。
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