きみと、まるはだかの恋
【美容・コスメインフルエンサー、ハナが一ヶ月間の活動休止を宣言】

 翌朝、目が覚めてスマホのLINEニュースにでかでかと自分についての記事が書かれていて、一瞬にして頭が冴えた。

「うわ、ニュースになってる」

 昨晩、自分の各種SNSでしばらく活動を休止すること、再開は一ヶ月後を予定しているがまだ未定、必ず帰ってきます、というお知らせの投稿をした。

【ハナさん寂しいです〜】
【ハナさんの投稿がなくなったら娯楽がなくなる……】
【悲しいけど事情があると思うので、ゆっくり休んでください!】
【また戻ってくる日を楽しみにしてるね!】

 SNSに寄せられたファンのコメントは、純粋に私の不在を悲しんでくれるものや、ゆっくり休んでほしいと労ってくれるものが多く、たくさんのひとに支えられてるなと実感した。
 昨日のうちにキャリーケースに荷物を詰めておいたから、このあと星見里に出発する予定だ。昴はゆっくり準備してきていいと言ってくれているが、私はいちはやく彼に会いたかった。
 自宅を出る前、ガスの元栓やエアコン、電気が切れているかしっかり確認する。
 長い期間家を空けるのが初めてなので多少不安はあるものの、セキュリティ完備のマンションだし、防犯面は大丈夫なはずだ。
 かちゃり、と玄関に鍵をかけると、なんだかしみじみとした感覚に襲われる。

「また戻ってくるね」

 都会のすみかは落ち着かないことも多いけれど、それでも自宅にいる間だけは唯一少しだけ心安らぐ時間だったなと、ちょっぴり切なくなるから不思議だ。
 大きなキャリーケースをガラガラと引いて歩くと、新しい自分に生まれ変わるための旅に出る気分で、胸がドキドキと高鳴っていた。

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