きみと、まるはだかの恋
 ……が、考えが甘かった。
 星見里で昴と共に生活を始めてから一週間。
 毎朝五時に昴に起こされて一緒に農作業を始める。途中休憩を挟みながらお昼前まで身体を動かし続ける。もうそれだけで一日分の体力を吸い取られたような心地になるのに、また午後からも農作業が待っている。昴には、「午後はやらなくていい」と言われていたが、他にやることがないのだ。だから自然と昴の仕事を手伝うことになり、十五時ごろには腰がガクガクとして動かなくなっていた。おまけに毎日圏外になっているスマホを眺めては、どうしてもデジタルの世界に触れられなくてイライラが募る。
 星見里の外の世界が、今どんなふうに動いているのかまったく分からない。
 日本では今なにが起きている?
 私のファンはなんて言っている?
 分からない。知りたい。見れない。知りたい。見たい。
 完全にスマホ依存者の禁断症状が出始めていた。身体の疲労と心の疲労が、たった一週間で限界まで積み重なっていく。

「波奈〜今日はこれで終わろっか。てか大丈夫!?」

 畑のすぐそばで地べたにへたり込んでいる私を見た昴が飛んでやってきてくれた。

「こ、腰が……動かない」

「うわ、それギックリ腰じゃね? ちょっと待ってろ」

 そう言いながら、昴がひょいっと私の膝下と背中に手を添えて持ち上げた。

「えっ、ちょっ!?」

 お姫様抱っこをされた。気づいたときには身体が宙に浮いていて、昴の首元に手を回すしかなくなっていた。
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