きみと、まるはだかの恋
「腰を冷やすから、ここで寝てて」

 リビングのソファの上に寝かせられて、昴が台所から保冷剤を持ってきた。丁寧にハンカチで包んでから、私の腰に当ててくれる。昴の手が自分の腰に触れるたびに、なんだかむずがゆい心地がして、恥ずかしかった。ひんやりとした保冷剤により、痛みが少しずつ和らいでいく。初めてギックリ腰になったけれど、思っていたよりずいぶん痛かった。たぶん、昴がいなければ今頃その場で動けずに泣きそうになっていただろう。

「手慣れてるね」

「まあね。ほら、田舎って高齢の方が多いだろ? ギックリ腰になるひともたくさんいるからさ」

「なるほど……確かにそうだね。昴はこうやってこの場所に住んでいるひとたちの生活を守ってきたんだ」

「なんだそれ、大袈裟だな」

 ははっと大きく笑った彼が、なんだか頼もしい。星見里いにる昴のことが、昔の昴とは違うように見えたり、変わらないなと思ったり。高校時代、長い時間を一緒に過ごしたと思っていたのに、やっぱりまだまだ彼について知らないことばかりだ。
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