クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
ひと気のない廊下にたどり着いたところで、私はあわてて日向ちゃんを振り返った。
「もう、いきなりどうしたのよ」
「日向ちゃん、学校の王子様って、綿谷くんなの!?」
「え? そうだけど。あれ、言わなかったっけ」
小首をかしげる日向ちゃんを前に、私は口をぱくぱくさせたまま固まる。
「おーい、華子? 聞いてる?」
顔の前でひらひらと手を振られても、私はただ呆然と一点を見つめていた。
…なんで今まで気づかなかったんだろう。
あんなに綺麗な顔で、モデルみたいにかっこいいのに。モテないわけがない。
――もし、私みたいな地味な存在が綿谷くんと関わってるって知られたら……
平穏な高校生活なんて、もう送れなくなるのでは…!?