クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
「あたし、こう見えて超優しいからー、今回は見逃してあげる。あ、でもー、今後もし王子に近くような真似したら、その時はどうなっちゃうかわからないよ?」
中里さんは持っていた本を、床に投げ捨てた。
「あーあ、あたし疲れちゃったー。じゃあねー、ハーナコさん」
中里さんはそう言って教室を出て行った。
床に落ちた本を拾って、折れてしまったページを、丁寧に広げた。
折れているだけで、破れてはいない。
それに私はほっと息をついた。
「私、なんでこんなにショック受けてるんだろう…」
本の表紙を見つめながら、ひとり力なく笑う。
この空間にこれ以上いたくなくて、私はぼんやりとしたまま、昇降口に向かった。