クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
綿谷くんは何かを言おうとしたけど、それをぐっと飲み込んだようだった。
「……わかった」
そう答えた綿谷くんくんは、雨の中、傘を刺さずに帰っていく。
その後ろ姿を、私はただ見送るだけで。
綿谷くんの姿が見えなくなってすぐ、私はその場にしゃがみ込んで、顔を埋めた。
「……泣いちゃダメ。涙、止まれ…」
どうしようもなく流れる涙を止めたいけど、なかなか止まってくれない。
本当は、あんなこと言いたくなかった。
綿谷くんとのことが周囲に広まって、学校生活は平和じゃなくなるかもしれない、そんな恐怖心はあった。
でも、今はそれ以上に…そんな恐怖心よりも、綿谷くんとの楽しい時間を過ごしたいことの方が大きくなっていて。
綿谷くんと、今までみたいに仲良くしていきたい気持ちが日に日に増えていく。
そんな行き場のない思いを、ただひたすら流れる涙にぶつけるしかなかった。