クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
そんなことを言う綿谷くん。
「ずっと見られてると恥ずかしいので…」
なんとかそうお願いをすると、どこか不服そうにしながらも、目をつむった。
小さく息を吸って、頭の中にしまい込んだ絵本を開く。
「むかしむかし、あるところに、ひとりの王様がいました。その王様にはーーーー」
話を口にすると、お母さんに読んでもらっていた頃を思い出して、懐かしい気持ちになった。
「……そして、王様は静かに言いました」
小さな声で結末を紡いだとき、綿谷くんの寝息がすぐ近くから聞こえた。
ふっと肩の力が抜ける。
……寝ちゃったのかな…