クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
「そういえば…」と、私はあることを思い出した。
海外では、別れの挨拶に男女問わずチークキスをする習慣があると、何かの本で読んだことがある。
あれは別れの挨拶ってこと、かな……
綿谷くんってもしかして帰国子女!?
考えても埒があかないので、綿谷くんは帰国子女、ということにして、強制的に納得することにした。
「おはよう」
寝癖で頭を盛大に飾ったお父さんが、「ふわぁ」なんて大口を開きながら、二階から降りてきた。
パジャマで寝癖つき放題の姿と、ピシッとスーツをきて会社に行く時の姿ではこんなにも違うものかと、目を細めながら親父を読むお父さんを見て思う。
「まいったなあ…最近は新聞の文字までよく見えなくなってきたよ」
去年40歳を迎えたお父さんも、ついに老眼が始まったみたい。
同い年のお母さんは、「あら、私はまだまだ平気よ」なんて手を洗いながらお父さんに言っている。