クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!

あまりにも整いすぎた横顔を直視できなくて、私は視線をそっと落とす。


「……あの、昨日のお礼は、ちゃんとします。だから……」


言い終えるか終えないかのうちに、綿谷くんがこちらを向いた気配がして――


次の瞬間、知っているぬくもりが、また頬に触れた。


「お礼なら、これでいいって言っただろ」


頬杖をついたまま、首を少し傾けて、綿谷くんは優しく私の髪に触れる。


私は目をぐるぐるさせながら、頬に触れた場所を思わず手でおさえた。


「あ、あのっ! そういうの、やめてください……!」


「……なんで?」


悪びれる様子もなく、むしろ不思議そうに、小さく首をかしげる綿谷くん。


その無防備な仕草に、ますます心が落ち着かなくなってしまう。



< 68 / 174 >

この作品をシェア

pagetop