クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
ち、近い、近いって……!
綿谷くんの心臓の音が、伝わってきそうなくらいの距離感に、私はぐるぐると目を回す。
「…華子って、小さいよな」
「そ、それ、嫌味ですか…?」
「ちげーよ…」
なんだか余裕のなさそうな声に、私は綿谷くんの顔を見上げる。
綿谷くんの熱っぽい瞳と、視線が絡まる。
「…俺から言ったくせに、やっぱふたりきりとか、無理」
何かを言ったみたいだけど、よく聞き取れなかった。
「あ、あのもう一度……な、何っ」
「今の俺の顔、見るなよ…」
目元を隠されて、綿谷くんが私の首元に顔を埋めたのを感じた。
キスも、今こうやって抱きしめる理由も、綿谷くんが何を考えているのかわからない。
そして、どうしてこんなにも心臓がドキドキするのかも。