幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「眠れなかったのか?」

ユリウス殿下の問いに、私は小さく頷いた。

「俺のせいだね。寂しい思いをさせた。」

優しい声音に胸が熱くなる。

「ううん……父に、あなたの想いを断れと言われたの。」

その言葉に、ユリウス殿下の視線が父へと向けられる。

「公爵閣下、言いたいことは分かります。」

毅然とした声。だが父は眉を寄せ、険しい顔で応じた。

「でしたら、これっきりにして頂きたい。」

冷徹な言葉が部屋の空気を張りつめさせる。

その瞬間──ユリウス殿下は迷いなく片膝をついた。

「……殿下!」

父が驚きの声を上げる。

「どうか、セシリアとの結婚をお許しください。彼女こそ、私が命を懸けて守りたい唯一の女性なのです」

皇子である身が、臣下に頭を下げるなど前代未聞。

その姿を目の当たりにして、私は息を呑んだ。

胸の奥が熱くなり、涙がまたこぼれ落ちる。

ああ、この人は本気なのだ。

国も立場も投げ打って、私を選んでくれている──。
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