幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「殿下、お時間です。」

扉の外から控えていた家臣の声がした。

「ユリウス……」

別れを惜しむように名を呼ぶと、彼は私の額にそっと口づけを落とした。

「明日も来るよ。必ずセシリアに会いに。」

胸が熱くなり、思わず頬が緩む。

彼が立ち上がろうとした時、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。

「これからはずっと一緒だ。」

その力強い声に、自然と「はい」と応えていた。

離れがたい気持ちを込め、私もぎゅっと抱き返す。

「……ああ、セシリア。もっと一緒にいたい。」

「私もです。」

囁き合うその言葉に、涙がにじむほどの幸福を感じた。

だが、その光景を黙って見守っていた父は、深くため息をついた。

「まったく……皇子殿下ともあろう方が。」

父の呟きには、困惑と諦め、そしてわずかな温かさが混じっているように思えた。

けれど私の胸にはただ、ユリウスの温もりだけが残っていた。

それは何より確かな約束の証のように感じられた。
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