純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
響也さまが封筒を受け取り、中身を見る。少し驚いたような顔で、私を見つめる。
「え? これは君への贈り物だよ。遠慮しなくていいんだよ」
その笑顔に、言葉が詰まる。言わなきゃいけないのに、喉が締まった。
「私……婚約、破棄されたんです。だから、これ、受け取れなくて」
響也さまの顔が一瞬で変わった。いつも温厚な目が、鋭く吊り上がる。
手が震えているのが見える。志保さまも目を丸くして、口を押さえる。
「……婚約破棄された?」
「え、なんで……」
二人の声に、涙がこぼれそうになる。深呼吸して、言葉を絞り出す。
「私が、愛人の子だから、らしいです。相手は、会社の社長令嬢らしくて」
響也さまの拳がテーブルに軽く当たる。静かな音なのに、なぜか怖い。いつも穏やかな彼が、こんな表情をするなんて思わなかった。
「そんなこと関係ないだろ! 君は俺たちの大切な娘だ!」
志保さまも頷く。
「最低よ、その男! 花暖ちゃん、気にしないで!」
……大切な娘。
その言葉は嬉しいけど、どこか信じられない。だって、私は母さんの子で、愛人の子だもの。清澄家の血を引いていても、外の世界ではいつもレッテルを貼られてきた。そんな私が、こんな温かい言葉を受け取っていいのだろうか。