純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。



「花暖! お待たせー!」


 振り向くと、赤いミニドレスに身を包んだ美奈さんが手を振っていた。

「待ってないよ。今来たばかり」

「よかった! ねえ、花暖、めっちゃ可愛い!」

「そ、そうかな?」

「めっちゃ似合ってる! ほら、仮面パーティーだよ! キラキラ輝いてなきゃ!」


 彼女の言葉に、つい笑みがこぼれる。彼女に引っ張られるように、駅から十五分ほど歩く。
 白を基調にしたおしゃれなバー、ガラスドアの向こうに柔らかな光が漏れている。入り口で仮面を買う。黒と紫のレースが繊細に編まれた、目元だけが見えるデザインだった。仮面を手に持つと、なんだか別の自分になれそうな気がする。

 これなら、人の目、気にしなくていい……心が少し軽くなり、胸のざわざわが和らぐ。
店内はシンプルだが落ち着いた雰囲気。白い壁、木のテーブル、カウンターではバーテンダーがシェイカーをリズミカルに振っている。カクテルのフルーティな香りが漂い、ほのかに心をくすぐる。シャンデリアの光が天井でキラキラと反射し、まるで小さな星空のよう。
 ウェイターの女性がソファ席に案内してくれる。柔らかなクッションに座ると、ほっと一息つける。


「いらっしゃいませ。メニュー、こちらです」


メニューを見ると、カクテルやワインの名前がずらりと並んでいた。色とりどりの写真が並び、どれも美味しそうで目が泳ぐ。

 普段、あまりお酒は飲まないから、どれを選べばいいか分からない。



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