純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
鏡の前でメイクを始める。腫れた目はコンシーラーで丁寧に隠し、チークで血色を足した。アイシャドウは控えめに、口紅は少し濃いめのピンク。
自分を隠したい気持ちが強いから、今日はいつもよりしっかりメイクをする。鏡に映る自分は、どこか別人のよう。こんな華やかな姿、久しぶりだ。
ヒールを履くと、膝が少し震える。こんな気分で外に出るのも久しぶりだ。
バッグにラピスラズリのストラップをそっと入れて家を出た。
駅前の噴水広場で美奈さんを待つ。モーブ色のドレスが夜風に揺れ、街灯の光に柔らかく映る。水面に映る光がキラキラと揺れ、まるであの夜景のレストランを思い出させる。胸が締め付けられるが、深呼吸して気持ちを切り替える。十九時ちょうど、遠くから美奈さんの声が弾けるように聞こえてきた。