純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
「久しぶりだな、花暖ちゃん。元気だった?」
“花暖ちゃん。”
その呼び方に、胸が締まる。高校卒業で清澄家を出てから、ほとんど会っていなかった。
あの時、ただありがとうとだけ言って、私は逃げるように出て行った。
「はい、身体は……丈夫なので」
でも、心はボロボロだ。婚約破棄、退職、会社での噂、全部言いたいけど、言葉が詰まる。喉が締め付けられるように痛い。
千暁さまが真剣な目をして悲しそうな表情を見せる。
「婚約破棄のこと、退職したこと、辛かっただろ? 大丈夫か?」
な、なんで知ってる…!? 響也さまから聞いたのかな。心臓がドキドキする。こんな情けない話、千暁さまに知られたくなかった。
「だ、大丈夫です。心配かけて、ごめんなさい」
でも、本当は大丈夫じゃない。心はぐちゃぐちゃになっている。問いかけていた千暁さまの目、まるで私の心を見透かしているみたいだ。仮面パーティーで隠したかったのに、こんな風に全部バレちゃった。