純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
「手洗いうがいしてきな。脱衣室の隣にある」
指さされた先の部屋には洗面台の鏡があった。まるでスイートルームのようだ。冷たい水で顔を洗うと、カクテルの酔いが少し醒める。鏡に映る自分、仮面を外した顔は、情けない。目が赤く、頬にはまだチークの色が残っている。なんで、千暁さまにこんな姿を見られちゃったんだろう。恥ずかしさと後悔が胸を締め付ける。
リビングに戻ると、千暁さまがグラスに水出し煎茶を注いでいた。スーツのジャケットを脱ぎ、ワイシャツの袖をまくった姿はどこか新鮮だ。
強面の顔と、こんな日常的な仕草のギャップに、ドキッとする。
「煎茶しかなくて、ごめんな。飲んで、酔い醒ましなよ」
「ありがとうございます。気にしないでください」
煎茶の清涼な香りが鼻に届く。ひと口飲むと、喉がスッとし、頭が少しクリアになる。ソファに座りながら、千暁さまの顔を見た。
やっぱり強面、でも、子供の頃に見た優しい目と同じだ。