純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
千暁さまがキッチンから新しい煎茶を持ってきてくれる。グラスの氷がカランと鳴り、涼やかな音がリビングに響く。
月光が窓から差し込み、部屋を静かに照らした。
「花暖ちゃん、昔みたいに話したいな。千暁でいい」
「で、でも……畏れ多いです」
「畏れ多いって、お前、子供の頃は『千暁兄さん』って呼んでたじゃん」
その言葉に、思わず笑っちゃう。確かに、昔は私が幼かったこともあってそう呼んでた。でも、今は違う。愛人の子の私が、清澄家の次期当主に馴れ馴れしく呼べない。心のどこかで、線を引いてしまう。
千暁さまが私の目を見つめる。真剣な目、まるで心の奥まで見透かしているみたいだ。
「花暖ちゃん、無理しなくていいんだよ」
千暁さまの声、深くて温かい。煎茶の香りが漂う静かなリビングで、時間がゆっくり流れる。パーティーでの酔いも、夜風の冷たさも、全部遠くに感じる。この瞬間だけは、安心していられる気がする。