純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
第7章 夜の問いかけ
リビングのソファに座る花暖の肩が、ほんの少し震えている。
モーブ色のレースワンピースは、パーティーの華やかさをまだまとっているが、彼女の目はどこか曇っている。水出し煎茶のグラスを手に持つ彼女の細い指が、グラスをぎゅっと握りしめていてまるでそこにしがみつかないと、心が崩れてしまいそうだとでも言うように。
「花暖ちゃん」
「千暁さま…そんな、気にしないでください。私、ただ……」
声が震え、途中で止まる。彼女の目、涙で潤んでキラッと光る。
「気にしないわけないだろう。それに婚約破棄されて会社も辞めたって、父さんから聞いた」
彼女の目が大きく見開く。
「響也さまから……? う、うそ、知ってるんですか?」
「当たり前だ。花暖ちゃんは家族だろ? 父さんも母さんも、めっちゃ心配してた」
家族。その言葉に、花暖の肩がビクッと動いた。
彼女は昔から愛人の子ってレッテルに苦しんでた。清澄家じゃ、俺も父さんも母さんも、花暖を本当の娘みたいに思ってる。幼い頃の彼女の笑顔はいつも眩しかった。でも、彼女の心には、いつもその影がある。
外の世界で囁かれる言葉が、彼女をこんな風に傷つけてきた。
「私は、愛人の子だから。千暁さまには、関係ないことなのに……」
彼女の声、小さくて、儚げだ。そんな彼女の隣、ソファの横に腰を下ろし彼女の肩にそっと手を置く。細い肩、ほのかに温かい。触れると、彼女の震えが伝わってくる。