純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
「花暖ちゃん、佑さんの話……どうおもった?」
彼女は小さく頷いた。
「うん。母さんが愛人じゃなかったって……本当のこと、知れてよかった」
声はまだ震えている。けれど、どこか解放された響きがあった。長い間、愛人の子という重荷に縛られてきた彼女が、やっと真実に触れた瞬間だったのだ。
俺は隣に座り、そっと彼女の肩に手を置き小さくて細い肩。その微かな震えが、すべてを物語っていた。
「花暖ちゃん……辛いこと、たくさんあったな。よく、耐えたよ」
花暖の瞳が俺を見上げる。涙で濡れて光る瞳。それでも笑みを浮かべている。
「千暁さまは昔から、そうやって守ってくれるよね」
守る――。その言葉が胸の奥で燃え上がる。
花菜さんからも花暖ちゃんをよろしくと言われていたのもあったけど、ただ彼女を想っていた。
彩花が彼女をいじめた時も、いつも俺はそばにいた。泣き顔も笑顔も、小さな手のひらも……全部が宝物だった。
けれど、高校生になってから、彼女が「千暁さま」と呼ぶようになった日から、距離を感じた。あの頃からずっと、心にしまい込んできた想い。
「花暖ちゃん……俺、昔から花暖ちゃんのことが……」
言葉が喉に詰まった。
どう伝えればいい? 何を言えば伝わる?
だが、彼女の大きな瞳が真っ直ぐに俺を見ている。その視線が、背中を押した。
深呼吸をし、彼女の手をそっと握る。冷えた指先が震えていた。その震えを、自分の熱で溶かしたいと思った。
「花暖ちゃん……俺と、結婚してくれ」