純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
「うん、なに?」
彼はジャケットのポケットから小さな黒いベルベットの箱を取り出す。ゆっくりと開けると、ダイヤモンドの指輪がキャンドルの光を浴びてキラキラと輝いていた。
「花暖、俺と結婚してください。」
頭が真っ白になる。レストランの喧騒が遠くに聞こえ、時間が止まったみたいだ。
「……っ……」
「急じゃないよ。ずっと考えてた。花暖と一緒にいたいって」
涙がじわっと溢れてくる。こんな幸せ、私なんかに…でも、廉斗の真剣な目を見て、頷くしかなかった。
「うん。私も、廉斗と一緒にいたい」
彼が指輪を私の薬指にはめる。冷たい金属が肌に触れるけど、心は熱い。レストランの他の客が拍手しているのに気付いて、顔が真っ赤になる。廉斗が笑いながら私の手を握る。
「これで、花暖は俺の婚約者だな」
夜景を見ながら、デザートのチョコレートケーキを食べる。濃厚な甘さが口に広がるけど、それよりも甘いのはこの瞬間。こんな幸せ、初めてかもしれない。でも、心の奥で小さな声が囁く。
愛人の子でも、こんな幸せ、許されるのかな?
レストランを出ると、夜風が頬を撫でる。廉斗が私の肩を抱き、温もりが伝わってくる。
「花暖、幸せにするからな。」
「うん…ありがとう、廉斗。」
指輪が街灯の光にキラリと輝く。この輝きが、ずっと続くといいな。でも、なぜだか母の声が頭をよぎた。
――花暖、気をつけて。幸せは、壊れやすいものよ。