明治誓いの嫁入り──政略結婚から始まる危険なほど甘い溺愛

第1章 結婚式

いつからだろう。父のため息が多くなってきたのは。

「はぁ……桐島家はもう終わりだ。」

肩を落とした父の背中が、かつての誇り高い華族の姿とは思えないほど小さく見えた。

食卓に並ぶ料理も、いつしか豪勢なものから、粗末な煮物や干物ばかりへと変わっていった。

そんなある日、父は私に向かって一つの願いを口にした。

「澄佳……財閥の御曹司に嫁いで貰えないか。」

「えっ……」

息が止まるかと思った。まさか私が、財閥に――。

想像もしたことのない未来に、声が出なかった。

父の目は真剣で、拒む余地などなかった。

家の名誉を守るため。借財を返すため。

そして何より、桐島家を存続させるために。

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