キミノオト

部屋に戻り、促されるままソファに座る。

当然のように隣に並ぶと思っていた彼は、なぜか目の前に座り込んだ。

「床に座ってたら冷えるよ」

そういっても、ここでいい、とゆっくり首を横に振るだけ。

私の隣には座りたくないってこと?

じんわり目頭が熱くなる。

「海音、ごめん」

陽貴君は私の手をそっと握って、静かに言葉を紡ぎはじめた。

「ずっと寂しい思いさせてたと思う。ごめん」

「気にしないで。忙しいのはわかってるから」

こんな時でもいい子ちゃんぶってしまう。

「記事のことも、ごめん」

その言葉で、我慢していた涙が一気に溢れた。

記事の内容を認めるってこと?

「…仕方ないよね」

「仕方ない?」

困惑した顔の陽貴君。

「私と違ってすごく魅力的だもん。心変わりしてもおかしk…」

「え、ちょっと待って」

本気で焦った様子で言葉を遮られる。

「勘違いしてそうだから先に言っとくけど、記事はでっちあげだよ」

「じゃああの写真は?すごく親密そうに話してたじゃん」

「写真を撮られたときは、綾ちゃんと誠も一緒にいた。信じられないなら2人に確認してくれていい」

そこまで言うってことは嘘じゃないんだ。

「じゃあSNSは?あんなに何回も共通点ある投稿してたのに」

どう説明するつもりだろう。

「それに関しては偶然だと思う、としか言えない」

偶然か。

曖昧で便利な言葉だね。

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