キミノオト
【15】
陽貴君と出会って3度目の夏。
今日に至るまで、たくさんの思い出をプレゼントしてもらった。
陽貴君が休暇を作ってくれてお忍びで旅行に行ったり、テレビ番組の収録を観覧させてもらったり、もちろんライブにも行った。
彼女として、ファンとして、充実した毎日。
私たちは、未だに大きな喧嘩をしたことがない。
陽貴君が大人で、いつも私を宝物のように扱ってくれるからだと思う。
その証拠に、度々共演したアイドルさんや女優さんから猛アピールをうけていた陽貴君だけど、心配する暇もないくらいに私だけを大切にしてくれた。
数年前の私に教えてあげたいくらい、本当に幸せな毎日を送っている。
そして今日、私は25歳になった。
「おめでとうございます」
「「ありがとうございます」」
受付のお姉さんの言葉に、2人で顔を見合わせて微笑みあう。
2人の左手薬指には、おそろいの指輪。
今この瞬間から私は山崎海音になった。
これからは彼女ではなくて、奥さん。
嬉しくて、夢を見ているようで、ふわふわしている。
「海音、ずっとにこにこしてるね」
「そういう陽貴君だって」
役所からの帰り道、手をつないで歩く私たちの会話。
変装していてもごまかしきれてないくらい口角が上がってる陽貴君。
「そりゃあね、やっと同じ苗字になれたし。もう正真正銘俺の海音なわけですよ」
「それを言ったら、私だけの陽貴君だよ」
バカップルみたいだね、って2人で顔を見合わせて笑う。