キミノオト

「僕は応援しますよー。誠実でいいね!ってことで、せっかくなので彼女さんに一言どうぞ」

「え!?あー、じゃあ、これからもよろしく。愛してる」

驚いた顔からのとびきり甘い笑顔。

画面越しなのに破壊力がすごい。

たくさんのファンが見ている中で、こんなこと言うのすごく勇気がいるはず。

それでも、まっすぐ気持ちをぶつけてくれる陽貴君の愛に自然と涙がこぼれた。

その後も、何事もなかったかのように番組は進行していく。

恐る恐るSNSを見ると、先ほどの陽貴君に対する投稿が溢れかえっていた。

”何あの甘い顔!最高すぎるんだが?”

”彼女さん羨ましすぎる”

”熱愛マジだったかショック…”

”疑似彼女体験ごちそうさまです”

”彼女がいるのは複雑だけど!もちろん応援するよ!”

思いのほかポジティブな意見が多くて驚いた。

もちろん一定数批判的だったり、ショックを受けてるファンもみられるけれど。

”絶対幸せになってほしい”

”いっそ結婚してくれ”

陽貴君達が温かい人だから、応援するファンもみんな温かいんだな。

「ただいま」

大好きな優しい香りに包まれる。

投稿を読むのに夢中で、帰ってきたことに気づかなかった。

「おかえりなさい。お出迎えできなくてごめんね」

「ちょっと寂しかったけど、それは別にいい。それより、何で泣いてるの?」

私の目元を拭いながら困ったような顔をしている。
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