休暇中の御曹司と出会ったら、愛され過ぎてもう無理です。
しかし、古賀さんはそんな若干意味の分からない私の行動を見ても、嬉しそうに笑った。

「いってらっしゃい、夏奈ちゃん。お仕事頑張ってね」

「行ってきます……」

なんとか言葉を返して、私はゴミ捨て場に向かうために階段を降りていく。

階段を降りながら、なんで自分が突然本を渡そうと思ったのかとか、なんで恥ずかしかったのかとか、自分の感情を分析してしまう。

本当はもう分かっているのに。




「古賀さんが私のためにわざわざ起きてくれたのが嬉しかっただけでしょ……」




そう呟いた自分の声に、私はまた一段と頬を赤らめた。
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