悩める整形女子!
 避難先は、重い扉を開けた先の非常階段。

 大崎さんの前で言われた事と、冬空の下の非常階段という事もあり、私の体はガタガタと震えが止まらなかった。溢れ出る涙も止まらない。こんな事になるくらいなら、さっさと自分から言えば良かった。私は整形してる女ですよって……

「こっ……ここにいたのか……エレベーターで1階まで降りちゃったよ」

 声に振り返ると、非常扉を開けた大崎さんが立っていた。

「ご、ごめんなさい……なんか大崎さんの事、騙してたみたいで……」

「なっ、何言ってんの、謝る事なんて何も無いでしょ。ちょ、ちょっと待ってて、すぐに戻るから」

 大崎さんはそう言ってその場を離れた。そして戻ってきたときには、自分の上着を右手に持っていた。

「とりあえず、これ着て。風邪引いちゃうから」

「お、大崎さんだって、寒いじゃないですか……私だけ着れません……」

 止まりかかっていた涙がまたあふれ出してくる。

「俺は大丈夫。お酒入ってるから体はポカポカだし。——ほら、まだ加齢臭とか無いはずだから安心して」

「も、もうっ! 大崎さんは!」

 私は泣きながら大崎さんの上着を羽織った。店内の暖房に当てられていたからか、その上着はとても暖かい。

「——実はさ、謝らなきゃいけないのは、俺の方だと思ってる」

「ど、どういう意味ですか……?」

「梨奈さんってさ、地元の駅前のコンビニでバイトしてたよね? この店に初めて来た時、小さくペコッペコッて頭を下げるのをみて、すぐに気付いたんだ」

 そう……私は整形する直前まで、そのコンビニで働いていた。まさか、大崎さんがお客さんで来ていただなんて。

「その時から気になってたんだ、梨奈さんの事。ただ、コンビニで働いてた頃って、一度も目を合わせてくれなかったでしょ? だからさ、この店に来て初めて目が合ったとき、凄く嬉しかったんだ俺」

 ただただ、話を聞くことしか出来ない私。それよりも、あの頃の私を気に掛けてくれていた人がいたなんて……

「だからさ……言うべきだったのは俺の方だったんだよ。『あのコンビニで働いてた梨奈さんですよね?』って。俺が変に気を使ったせいだ、きっと。ごめん……梨奈さん」

 頭を下げる大崎さんの前で、私は思わず両手で顔を覆う。

 止まらない涙の理由は何?
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