悩める整形女子!
 その後、大崎さんは店が閉まるまでカウンターで飲み、二人一緒に店を出た。お客さんと退店するなんて、初めての事だ。

「私、いつかはちゃんと言おうって思ってたんです。——でも、もし嫌われたらどうしようって思うと、なかなか言い出せなくって」

「——じゃあさ、逆に考えてみてよ。もし俺が実はヅラだったとしたら、告白してもフラれるってこと?」

「ハハハ。そうだとしても、大崎さんならオッケーです」

 答えた瞬間、私は()められたと思った。大崎さんがヅラであろうとなかろうと、告白されたら付き合うと言ってしまったようなものだ。

 だが、隣には私以上に驚いている大崎さんがいた。

「じゃ、じゃあ、俺と付き合ってくれるって事……?」

「は、はい。——え? 今の、そういう意味で言ったんじゃないんですか……?」

「ぜ、全然そんなつもりじゃ無かった……ま、まさか、こんな形で告白しちゃうなんて……」

 そう言うと、大崎さんは両手を上げて「よっしゃーーー!!」と大声を上げた。実はここ最近、私にいつ告白しようかと悩んでいたらしい。


「最悪な一日だって思ってたのに、最高の一日になっちゃったかもしれません。——瞳と優香には、感謝しなくちゃいけないかもしれませんね」

「本当だね。——あ、そうそう。一応言っておくけど、まだヅラじゃないから、今の所は」

 そう言って、大崎さんは自分の髪の毛をピコピコと引っ張った。

「ハハハ、どちらでも構わないですよ。どうせ年老いたら、みんな薄くなるんですから」

 この道をずっと行けば、私たちの地元だ。距離的には地下鉄かタクシーを使うべきなんだろうけど、少なくとも私はこのままがいい。大崎さんも、そのつもりでいてくれている気がする。

「実はさ……バーで梨奈さんに会った時、運命を感じたんだ。ああ、やっぱりこの人には再び出会う運命だったんだって」

 前を見ながら話す大崎さんの横顔を、私はじっと見つめる。大崎さんはその視線に気付いたのか、慌てて言った。

「……って言っても、ストーカーじゃ無いからね! ほっ、ほんとただの偶然だったんだから!!」

 そのセリフに、私は思わず吹き出した。釣られて大崎さんも笑い出す。

 雲ひとつない満月の夜に響く、二人の笑い声。

 澄みきったその夜空は、わだかまりの消えた私の心のようだった。





〈 悩める整形女子! 了 〉




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