失恋するまでの10日間〜妹姫が恋したのは、姉姫に剣を捧げた騎士でした〜
恋を叶えてからの10年間〜妹姫を追いかけて、英雄は荒れた大地を再興します〜

カーク1

 ルヴァイン王国の英雄カーク・ダンフィルは、己の恋を叶えてから十年目に、これ以上ないであろうという幸福を差し出された。

「カーク、赤ちゃんが出来たみたい! ようやく、ようやくよ……っ」

 涙するエステルにつられて己の頬にも流れる熱いものが、二人が心血注いできた南部の地に滴り落ちて、吸収されていく。

「エステル、ありがとう……本当にありがとうっ」

 閉じられた目の奥に蘇るのは、この十年の始まりの記憶だった。国を救った英雄と王家の姫君の成婚として王都で盛大に祝福されたことが、昨日のことのように思い出される。

 宿ったばかりのお腹の子の負担にならぬよう、細心の注意を払って妻を抱きしめながら、決して平坦ではなかったここまでの道筋に思いを馳せた。

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