失恋するまでの10日間〜妹姫が恋したのは、姉姫に剣を捧げた騎士でした〜
カーク12
副団長に礼を伝えた後、今後の具体的な工事についてメンデル執政官と詰めることになった。広大なロータス領を渡る河川の船着場は大小合わせるとかなりの数に登る。まずは主要なものから手をつけようということで話がまとまった。具体的な割り振りについてはデュカス隊長が戻ってきてからだ。
水路のいいところは陸路よりも物資や人の輸送が楽ということだ。時間の短縮も大きい。
「これでひとまずの道筋が整いました。私が赴任した当初、まずは領都の中心街の機能を急ぎ整えよとの指示に、道や農地を優先させるべきではと思いもしましたが、今となってはこれで正解でしたな。ここまで見越しておられたのだとしたら、さすがはランバート宰相補佐官ということですかな」
「ランバート宰相補佐? 彼が指示を出していたのですか?」
「えぇ。ランバート補佐官は魔獣暴走発生時から対策本部の係でいらした方ですからね。南部のこともよくご存知ですよ。今は復興対策の長でいらっしゃいますので、私が逐次報告や相談を申し上げるのは彼なのです」
ソフィア王女の婚約者でもあるからよく知っているだろうと付け加える。確かに自分たちの結婚の前に、ソフィア王女の婚約が電撃的に発表されたことは記憶に新しい。カークも目の回る忙しさの中で、一度だけ顔を合わせたことがあった。一騎士にすぎなかった自分は、宰相のことは知っていても、補佐官のことまでは知らなかった。そのため顔を見ても、何度か騎士団の建物に来ていたところを見かけたことがあるなという、その程度の記憶しかなかった。
「初めまして、英雄殿。ユリウス・ランバートです」
握手を求められたので返せば、身体の細さから想像する以上の力で返されたことを憶えている。エステルの夫となる自分とソフィア王女の夫となる彼は義兄弟ということになるわけだが、相手から漂ってくる空気はどこかひんやりとしたものだった。敵愾心というほどではないが、友好を温めたいという気持ちはあまり感じられない。なんとなく距離感を掴めないまま、日々の忙しさに忙殺され、そのままになってしまった。
南部の復興について一手に引き受けているということは、向こうも相当に忙しくしていたのだろう。疲労もあったからこそのあの微妙な反応だったかもしれないと思い直す。彼がロータス領に深く関わっていると知っていたら、もう少し話を聞いておくのだったと反省するが今更だ。
だがこれから先、彼とは密にやりとりすることになるのだろう。いくらでも関わる機会はあると、カークは指示書を置いた。
水路のいいところは陸路よりも物資や人の輸送が楽ということだ。時間の短縮も大きい。
「これでひとまずの道筋が整いました。私が赴任した当初、まずは領都の中心街の機能を急ぎ整えよとの指示に、道や農地を優先させるべきではと思いもしましたが、今となってはこれで正解でしたな。ここまで見越しておられたのだとしたら、さすがはランバート宰相補佐官ということですかな」
「ランバート宰相補佐? 彼が指示を出していたのですか?」
「えぇ。ランバート補佐官は魔獣暴走発生時から対策本部の係でいらした方ですからね。南部のこともよくご存知ですよ。今は復興対策の長でいらっしゃいますので、私が逐次報告や相談を申し上げるのは彼なのです」
ソフィア王女の婚約者でもあるからよく知っているだろうと付け加える。確かに自分たちの結婚の前に、ソフィア王女の婚約が電撃的に発表されたことは記憶に新しい。カークも目の回る忙しさの中で、一度だけ顔を合わせたことがあった。一騎士にすぎなかった自分は、宰相のことは知っていても、補佐官のことまでは知らなかった。そのため顔を見ても、何度か騎士団の建物に来ていたところを見かけたことがあるなという、その程度の記憶しかなかった。
「初めまして、英雄殿。ユリウス・ランバートです」
握手を求められたので返せば、身体の細さから想像する以上の力で返されたことを憶えている。エステルの夫となる自分とソフィア王女の夫となる彼は義兄弟ということになるわけだが、相手から漂ってくる空気はどこかひんやりとしたものだった。敵愾心というほどではないが、友好を温めたいという気持ちはあまり感じられない。なんとなく距離感を掴めないまま、日々の忙しさに忙殺され、そのままになってしまった。
南部の復興について一手に引き受けているということは、向こうも相当に忙しくしていたのだろう。疲労もあったからこそのあの微妙な反応だったかもしれないと思い直す。彼がロータス領に深く関わっていると知っていたら、もう少し話を聞いておくのだったと反省するが今更だ。
だがこれから先、彼とは密にやりとりすることになるのだろう。いくらでも関わる機会はあると、カークは指示書を置いた。