失恋するまでの10日間〜妹姫が恋したのは、姉姫に剣を捧げた騎士でした〜
カーク18
この日の有言実行とばかりに、支援が行き届いていない土地に復興の足掛かりを築くべく、エステルは広い南部の土地を縦横無尽に駆け巡ることになる。早々に家督を譲られたカークの名とともに、領主夫人エステルの姿は、南部の領民たちの目ににしっかりと焼きつけられ、二人が名実ともにロータス領主夫妻としてこの地に根付く象徴となるのだった。
エステルが輿入れとともに王家から引き連れてきた馬車は、その後も復興工事の足として大いに活躍した。老朽化のため取り壊されることになったときは、貸与先の各地域で引退式が行われ、取り外された王家の紋章は街の宝として受け継がれた。一緒に引退した馬たちも地域住民に大切にされ、亡くなった後も丁寧に埋葬されたという。
二人が南部入りして半年後、王家ではソフィア王太女の結婚式が盛大に開かれたが、その席にエステルの姿はなかった。南部にいたエステルが直前に流産してしまったためだ。本人も周囲も妊娠に気づいておらず、流れて初めてわかったことだった。
さすがのエステルもひどく落ち込み、王都までの長旅を見送らざるを得なかった。ソフィアの慶事に水をさすわけにもいかず、エステルの体調不良と理由を述べてひとりで結婚式に出席したカークは、国王夫妻にだけは事前に事情を伝えておいた。結婚式典後に事実を知らされたソフィアからは謝罪と労りの長い手紙が届き、エステルも多少前向きになった。
まだ十八になったばかりの若い花嫁だ。すぐに次があるだろうと皆が期待する中、先にソフィアの懐妊の報がもたらされた。結婚式からわずか三ヶ月後のことだ。
来年には甥か姪かが誕生するとわかったエステルの喜びようは相当なもので、次の社交シーズンこそは王都に行って姉に会うのだと張り切った。元気を取り戻し、領主夫人として精力的に活動する中、残念ながら翌年のシーズンは細々した事情が重なり、王都に戻ることができなかったが、代わりに次の王太子となる男児を産み落としたソフィアが南部の視察に出向く計画が持ち上がった。ロータス領の復興はかなり進んだとはいえ、王太女を迎えるとなれば警備体制や交通網の整備にも不安が残る。念には念を入れるためにもう一シーズン見送って準備を整えたのだが、直前にソフィアの第二子の妊娠がわかり、視察は取りやめになった。
未来の国王となる第一子に続く、王家の新たな家族の誕生だ。非常に喜ばしいことだが、エステルが少しだけ残念に思ったことは誰も責められないだろう。ソフィアは無事男児を産み、その知らせだけが届いた。
エステルが輿入れとともに王家から引き連れてきた馬車は、その後も復興工事の足として大いに活躍した。老朽化のため取り壊されることになったときは、貸与先の各地域で引退式が行われ、取り外された王家の紋章は街の宝として受け継がれた。一緒に引退した馬たちも地域住民に大切にされ、亡くなった後も丁寧に埋葬されたという。
二人が南部入りして半年後、王家ではソフィア王太女の結婚式が盛大に開かれたが、その席にエステルの姿はなかった。南部にいたエステルが直前に流産してしまったためだ。本人も周囲も妊娠に気づいておらず、流れて初めてわかったことだった。
さすがのエステルもひどく落ち込み、王都までの長旅を見送らざるを得なかった。ソフィアの慶事に水をさすわけにもいかず、エステルの体調不良と理由を述べてひとりで結婚式に出席したカークは、国王夫妻にだけは事前に事情を伝えておいた。結婚式典後に事実を知らされたソフィアからは謝罪と労りの長い手紙が届き、エステルも多少前向きになった。
まだ十八になったばかりの若い花嫁だ。すぐに次があるだろうと皆が期待する中、先にソフィアの懐妊の報がもたらされた。結婚式からわずか三ヶ月後のことだ。
来年には甥か姪かが誕生するとわかったエステルの喜びようは相当なもので、次の社交シーズンこそは王都に行って姉に会うのだと張り切った。元気を取り戻し、領主夫人として精力的に活動する中、残念ながら翌年のシーズンは細々した事情が重なり、王都に戻ることができなかったが、代わりに次の王太子となる男児を産み落としたソフィアが南部の視察に出向く計画が持ち上がった。ロータス領の復興はかなり進んだとはいえ、王太女を迎えるとなれば警備体制や交通網の整備にも不安が残る。念には念を入れるためにもう一シーズン見送って準備を整えたのだが、直前にソフィアの第二子の妊娠がわかり、視察は取りやめになった。
未来の国王となる第一子に続く、王家の新たな家族の誕生だ。非常に喜ばしいことだが、エステルが少しだけ残念に思ったことは誰も責められないだろう。ソフィアは無事男児を産み、その知らせだけが届いた。