令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



「俺だって完璧じゃない。支え合わないときっと前に進めない。だから、芙美。俺と一緒に、全部乗り越えていこう」
 その言葉に、芙美の心臓が早鐘を打った。侑の真っ直ぐな瞳と、穏やかだが力強い声が、彼女の心に深く響いた。まるで、ずっと閉ざしていた扉が、そっと開かれるようだった。

 芙美は、小さく笑って、涙をぬぐった。ハンカチの柔らかな感触が、彼女の心を落ち着かせた。
「……うん。私も、あなたを支えたい」
 その一言に、彼女の素直な気持ちがこもっていた。侑が柔らかく微笑むと、二人の間に見えない糸が強く結ばれたような気がした。カフェの喧騒が遠くに感じられ、窓際の席は、まるで二人だけの小さな世界のようだった。

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