令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
「芙美さん、資料の件は?」
隣の同僚の声に、芙美はハッと我に返った。
「……あ、はい、すみません。すぐ確認します」
慌ててキーボードに手を伸ばし、画面に視線を戻す。だが、心はまだ侑のことでいっぱいだった。自分でもそのことに戸惑いながら、彼女は小さく息を吐いた。仕事に集中しなければ。広報の仕事は、細かな調整やクライアントとの折衝が命だ。ミスは許されない。なのに、今日の彼女の心は、まるで春のそよ風に揺れる木の葉のように、落ち着かない。