令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
「……芙美さん」
侑が少し声を震わせて呼んだ。その声に、芙美の心臓がドキッと跳ねる。
「はい」
彼女もまた、息をのんで応えた。侑の真剣な瞳を見つめながら、期待と緊張が胸の中で交錯する。
「僕は、芙美さんと過ごす時間が、何よりも大切です」
侑の言葉には、迷いがなく、誠実さと温かさがあふれていた。その一言が、芙美の心の奥に熱い波を起こした。彼女は一瞬、言葉が出なかったが、胸の奥で同じ気持ちが響いていることに気づいた。
「私も……同じ気持ちです」
小さな声だったが、その言葉は、店内の静かな空気に溶け込みながら、確かに侑に届いた。彼女の頬がほのかに赤らみ、自然に笑みがあふれた。二人の間に、言葉以上の何かが流れる瞬間だった。
食事を終え、侑がそっと手を差し出した。芙美は迷わずその手を握り返した。指先が触れ合うだけで、胸の奥が熱くなる。キャンドルの光が、二人を柔らかく照らし、店内の静かな音楽が、まるで二人の心のリズムを奏でているようだった。
カフェを出ると、夜風が二人を優しく包み込んだ。街灯の光が歩道を照らし、そよ風に揺れる街路樹の葉が、かすかな音を立てる。手をつないだまま歩く足取りは自然で、まるで長年連れ添った二人のように、心地よいリズムで揃っていた。芙美は、侑の手の温もりに、胸の奥がじんわりと温まるのを感じた。心の距離が、完全に近づいている実感があった。
小さな公園に着くと二人はベンチに腰を下ろし、頭上では都会の光に少し霞む星々が静かに瞬いている。街のざわめきは遠くに聞こえ、二人だけの静かな世界が生まれていた。
「芙美さん……」
侑の声が、ほんの少し緊張を帯びて響いた。
「はい」
芙美もまた、心臓が高鳴るのを感じながら応えた。彼女の瞳には、期待と幸せが混じっていた。
ゆっくりと、侑が芙美の手を握り、軽く抱き寄せた。芙美も自然に身を預け、互いの温もりを確かめるように、そっと寄り添う。その瞬間、まるで時間が止まったように、二人だけの世界が広がった。侑の肩の温もり、芙美の髪に触れる夜風、星の光――すべてが、二人を静かに祝福しているようだった。