令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



 

 その日の午後、オフィスに戻った芙美は、書類整理をしながら同僚の会話を耳にした。軽い雑談の合間に、ふと気になる言葉が飛び込んできた。
「三浦さん、他のプロジェクトで女性と長く残業してたって本当ですか?」
 同僚の美咲が、軽い口調で笑いながら話していた。だが、その一言が、芙美の心に小さな刺を刺した。
 
 頭では、侑の誠実さを信じている。なのに、心の奥でざわめきが広がる。侑が他の誰かと親しげに話している姿を想像すると、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。芙美は、思わずスマホを手に取り、侑に連絡しようとしたが、指が止まった。
 急に問いただすなんて……私、嫌な女だ。
 ただ信じたいだけなのに。
 彼女はスマホをデスクに置き、深呼吸して気持ちを落ち着けようとした。だが、胸のモヤモヤは簡単には消えなかった。オフィスの窓から見える街のビル群が、いつもより少し色褪せて見えた。

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