令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
夕方、芙美は思い切ってオフィスを出ると、駅前の小さな公園に向かった。少し肌寒い秋の風が吹き、ベンチに座ると、冷たい木の感触が伝わってくる。空は夕暮れから紺色へと移り変わり、遠くで街灯が点り始めていた。芙美は、膝に置いたバッグを握りしめ、空を見上げた。心の中では、侑が来てくれるかどうかの期待と不安が入り混じっていた。
私が勝手に不安になってるだけだ。でも、ちゃんと話したい。
彼女は、スマホを手に持ったまま、侑からの連絡を待った。やがて、遠くから足音が近づいてくる。振り返ると、侑が少し息を切らしながら立っていた。
カジュアルなジャケットに、眼鏡の奥で光る瞳。少し疲れた表情だったが、芙美を見つめる目は誠実さに満ちていた。
「芙美さん……」
その声に、芙美の胸のざわつきが少しずつ和らいだ。侑の誠実な表情を見ると、昼間の不安が、まるで霧が晴れるように薄れていく。
「私……ちょっと不安になってました」
芙美は、素直に打ち明けた。自分の声が少し震えていることに気づき、頬がほのかに熱くなる。
「そうですよね。僕も……連絡できずに申し訳なかった」
侑の声には、申し訳なさと温かさが混じっていた。二人はベンチに腰を下ろし、互いの気持ちを言葉で確認し合った。侑が、仕事の忙しさや他のプロジェクトの話を説明するにつれ、芙美の心にあった刺が、ゆっくりと抜けていく。
「他の女性と残業してたって聞いたから、ちょっと……気になって」