令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~



 午後、二人は散歩に出かけた。街の緑道を歩きながら、そっと手をつなぐ。木々の間を抜ける風が、芙美の髪を軽く揺らし、侑のセーターの裾を翻す。通り過ぎる人々のざわめきや、遠くで響く電車の音も、二人にとっては遠い背景音にすぎなかった。今この瞬間、二人だけの世界が広がっていた。
 緑道の途中で見つけた小さなカフェに入り、二人はアイスを注文した。木製のテーブルに置かれたバニラアイスをスプーンで分け合いながら、笑い声が響き合う。侑が「ちょっと溶けてきたね」と笑うと、芙美は「侑さんが食べるの遅いから」とからかい、二人で顔を見合わせて笑った。 

 芙美は、心の中で静かに呟いた。
 ――これからも、こうして一緒にいられる。互いを信じ、日常を大切にしていける。
 侑もまた、芙美の手を握りながら、同じ気持ちを抱いていた。彼女の笑顔や、さりげない仕草が、彼の心に静かな喜びを灯していた。  


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