令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
第2部

第1話 朝のすれ違い


 朝日がカーテンの隙間から差し込み、吉川芙美はアラームの音でそっと目を覚ました。
 まだ目が完全に開いてなかったが無理矢理にでもベッドの上で体を起こし、枕元のスマートフォンを手に取った。画面には、いつもなら朝の挨拶や小さなメッセージが届いているはずの通知欄……そのはずなのだが、今日は何もなかった。

 侑から、メッセージがない……。

 昨夜、遅くまで三浦侑と電話で話していた。たわいない仕事の話から、好きな映画や週末の予定まで笑い合いながら時間を忘れて話した。あの温かな声と、『また、明日』と約束した言葉が、芙美の心に柔らかい余韻を残していた。
 それなのに、今朝の沈黙が、彼女の胸に小さな波を立てていた。


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