愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~
第27話 荒神と藤香御前、因果の真実
……隠しごとはあの邂逅だけだ。
だが、それを言えば、自分はあの庭に閉じ込められてしまう。
ただ言わなければいいだけ。季音はすぐに首を振ろうとしたが――それと同時だった。
「……お前の中には間違いなく狐がいる。そうでなければ、人であったはずのお前がそんな姿にならないはずだ。人が妖になるなんておかしいからな。以前、狐火を放った時もそうだ。季音。そいつには、もう会ったのか?」
彼は思いもよらぬことを訊いたのだ。
自分が狐になった理由を彼は確実に知っている。そう確信し、季音の面はたちまち凍りついた。
……出会った時から、彼は何もかも知っていた。知っているのに話さなかった。自分は何も知らないと言えば、「新しくやり直せ」と彼は季音をその真実から遠ざけた。裏を返せば、彼には〝後ろめたい思惑〟があったのではないかと思えてしまう。
――陰陽師と狐。何度だって考えた関係性。何もないわけがないだろう。
それも、自分は憑かれているのだ。もし、自分の中に居る狐と深い因果があるとすれば、彼は自分を陥れて滅する気でがないかと容易く考えることができる。
本当に愛してくれていたのだろうか、その気持ちは本当だったのだろうか……そんな思惑がよぎり、季音は唇を震わせて龍志を睨み据えた。
「……龍志様は過去の私の全てを知ってるんですよね? どうして私に何も教えてくれなかったのです。隠しごとをしているのは龍志様ではないのですか!」
告げた瞬間、キンと耳鳴りが突き抜け、頭が痛んだ。それにも構わず、季音は唇を拉げて言葉を続けた。
「ならば、どうして私は狐になったのです? 何を知ってるのですか……貴方が私を想ってくれた気持ちは本当ですか? 私を、私を……どうしようとしたのです!」
すると、龍志は目を吊り上げ、恐ろしい形相で季音を睨む。
「気持ちはまことだ! 俺がそんな嘘を吐くように見えるのか、俺の志は曲がっていない!」
彼にどやされることはあっても、剣幕で怒鳴られるのは初めてだった。それに臆し、季音が肩を竦めると、彼ははっとして、怒鳴ったことを詫びた。
「……大凡は分かってる。だが、理由など必要なければ言う必要はない」
だが、それを言えば、自分はあの庭に閉じ込められてしまう。
ただ言わなければいいだけ。季音はすぐに首を振ろうとしたが――それと同時だった。
「……お前の中には間違いなく狐がいる。そうでなければ、人であったはずのお前がそんな姿にならないはずだ。人が妖になるなんておかしいからな。以前、狐火を放った時もそうだ。季音。そいつには、もう会ったのか?」
彼は思いもよらぬことを訊いたのだ。
自分が狐になった理由を彼は確実に知っている。そう確信し、季音の面はたちまち凍りついた。
……出会った時から、彼は何もかも知っていた。知っているのに話さなかった。自分は何も知らないと言えば、「新しくやり直せ」と彼は季音をその真実から遠ざけた。裏を返せば、彼には〝後ろめたい思惑〟があったのではないかと思えてしまう。
――陰陽師と狐。何度だって考えた関係性。何もないわけがないだろう。
それも、自分は憑かれているのだ。もし、自分の中に居る狐と深い因果があるとすれば、彼は自分を陥れて滅する気でがないかと容易く考えることができる。
本当に愛してくれていたのだろうか、その気持ちは本当だったのだろうか……そんな思惑がよぎり、季音は唇を震わせて龍志を睨み据えた。
「……龍志様は過去の私の全てを知ってるんですよね? どうして私に何も教えてくれなかったのです。隠しごとをしているのは龍志様ではないのですか!」
告げた瞬間、キンと耳鳴りが突き抜け、頭が痛んだ。それにも構わず、季音は唇を拉げて言葉を続けた。
「ならば、どうして私は狐になったのです? 何を知ってるのですか……貴方が私を想ってくれた気持ちは本当ですか? 私を、私を……どうしようとしたのです!」
すると、龍志は目を吊り上げ、恐ろしい形相で季音を睨む。
「気持ちはまことだ! 俺がそんな嘘を吐くように見えるのか、俺の志は曲がっていない!」
彼にどやされることはあっても、剣幕で怒鳴られるのは初めてだった。それに臆し、季音が肩を竦めると、彼ははっとして、怒鳴ったことを詫びた。
「……大凡は分かってる。だが、理由など必要なければ言う必要はない」