愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~
 しかし、参拝者が囁くには、この岩はたびたび場所を移すという。触れると縁結びや夫婦円満、家内安全の御利益があるとされ、黒羽近郊の若い女性たちの間で人気の参拝地となっていた。
 参拝者は二つの岩にそれぞれそっと手を置き、願いを込めて目を閉じる姿が絶えない。
 しかし、日が落ち、参拝客が去った夜の藍生神社は、別の顔を見せる。
 
 一匹の狛犬は、月光の下で(イヌタデ)と名乗る麗しい美丈夫の姿に戻り、穏やかな瞳で社殿に背を向け静かに境内を見守る。
 
 鬼岩と狸岩もまた、(オボロ)(タキ)の本当の姿を現し、神主夫妻と愛らしい子どもたちと談笑し、賑やかで和やかなひとときを過ごしていた。
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