甘く苦く君を思う
「沙夜がお金を受け取ったって……噂を聞いた」

その言葉に一瞬息をのんだ。

「そんなのしてない。両親がきたわ。そして昴さんが跡取りだと言われ封筒を置いていかれたの。私は受け取るつもりなんてない」

「でも、それはここにあるのか?」

彼の声は低く、かすかに震えている。

「うん。どうやって返したらいいかわからなくて」

「沙夜は俺が両親が高倉グループの人間だと言ったのに返し方がわからなかったのか? 何日もあったのに」

きっと彼は私が嬉々として受け取ったとでも聞いだのだろうか。
やはり早く彼に相談すべきだったと思った。
お金を置いていかれた時点で両親はこの流れを作るべく考えていたのだろうとハッとした。

「私は受け取るつもりはなかった。でも……」

「でもここにあるんだな。俺が高倉グループの跡取りと聞いてどう思った?」

彼は私から視線を逸らしそう聞いてきた。それは嬉しかったか、と言われているのだろうか。まるで私が彼の地位を聞いて喜ぶとでも?それともお金がもらえて喜んだとでも思っているのだろうか。

「……もうやめよう」

「何を言ってるんだ?」

ようやく私なの顔を見た彼はどこか虚な様子だった。

「あなたは……もっとふさわしい人と幸せになるべきだわ」

そう言う私の声が震えているのがわかる。
彼は私を信じていないんだと思った。周囲になんて言われたのかわからない。でも、私が彼の正体を知ってどう思ったかと聞かれた時点でよくわかった。

「沙夜、何を言ってるんだ」

彼が縋るように私に手を伸ばす。でもその手を取ったらいけない。
思わず一歩後ろに下がる。
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