甘く苦く君を思う
俺は海外勤務を選んだ。
父の後継者としての基盤を整えるため、それも確かだったが本当の理由は沙夜への未練を断ち切るためだった。
忙しさに身を沈めていればあの海の景色も一緒に雨宿りをし、笑い合った日々もやがて忘れられると思った。
でも、どれだけ仕事で成果を上げても、何年経っても彼女のことを忘れることはできなかった。色褪せることはなく、反対に色濃く思い出が蘇ってくる。彼女の笑った顔も泣きそうな顔も、恥ずかしそうに恥じらう顔でさえも瞼の裏に焼きついたままだった。
彼女が明るくて優しくて、パティシエールとしてどれだけ努力してきているのかわかっていたのに、彼女の未来を潰してしまった。
俺が高倉の跡継ぎだと初めから伝えるべきだった。彼女がそんな肩書きに左右される人じゃないとわかっていたのに……。あの雨宿りをした、ただの高倉昴でいたいと願ったから色々な誤解が生まれてしまったんだ。
雨宿りしたあの日を今でも夢に見る。でも彼女はいつも泣きそうな表情を浮かべている。俺は手を差し伸べたいのに叶わず苦しい。そんな夢にハッとして目が覚める。
どこにいるんだ、沙夜。
もう一度、もう一度でいい。君に会いたい。
父の後継者としての基盤を整えるため、それも確かだったが本当の理由は沙夜への未練を断ち切るためだった。
忙しさに身を沈めていればあの海の景色も一緒に雨宿りをし、笑い合った日々もやがて忘れられると思った。
でも、どれだけ仕事で成果を上げても、何年経っても彼女のことを忘れることはできなかった。色褪せることはなく、反対に色濃く思い出が蘇ってくる。彼女の笑った顔も泣きそうな顔も、恥ずかしそうに恥じらう顔でさえも瞼の裏に焼きついたままだった。
彼女が明るくて優しくて、パティシエールとしてどれだけ努力してきているのかわかっていたのに、彼女の未来を潰してしまった。
俺が高倉の跡継ぎだと初めから伝えるべきだった。彼女がそんな肩書きに左右される人じゃないとわかっていたのに……。あの雨宿りをした、ただの高倉昴でいたいと願ったから色々な誤解が生まれてしまったんだ。
雨宿りしたあの日を今でも夢に見る。でも彼女はいつも泣きそうな表情を浮かべている。俺は手を差し伸べたいのに叶わず苦しい。そんな夢にハッとして目が覚める。
どこにいるんだ、沙夜。
もう一度、もう一度でいい。君に会いたい。