甘く苦く君を思う
「今日は娘を遊んでくれてありがとう」

私は渚を抱き上げるとバッグを肩にかける。

「帰るね。それじゃ……元気で」

またね、とは言えない別れだ。最後くらい笑って別れようと笑顔を作る。

「待ってくれ、沙夜。まだ聞きたいことが……。この子は」

渚を見て何か言おうとしているのを遮るように言った。

「私の子です。あなたには関係ない」

彼は私を呼び止めるが、振り向くつもりはない。もう終わったことだ。
ここできちんと終わりにしないと本当に前に進めない。
私には渚がいるから大丈夫。私が本当に好きだった人に幸せな人生を歩んでほしいと本気で願った。
公園から出ると自然と涙がこぼれ落ちてきた。
彼の表情を思い出すと私の胸は苦しくなる。けれどお互いのためにも必要な別れだった。
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